人生の特等席:アンチ・マネーボール
ク リント・イーストウッドの映画は最近見なくなってました。なんとなく説教臭さを感じてたから。この映画もそういうところがあるんですが、その一方 で、随分大衆迎合的というか、お涙頂戴的というか、水戸黄門的なお決まりの着地点に着地する話で、その結果、見た後の気分がとても爽やか なのだった。
いや、もうちょっと高踏的でもいいような気もするんだけど……まぁいいか。
Trouble with the curve (邦題:人生の特等席)
ガス(イーストウッド)はメジャーリーグ球団の老いたスカウト。実績を買われてこの歳でも現役スカウトだが、あと3ヶ月で今の契約は切れる。その上最近は目が霞むようになってきた。もうすぐ年に一度のドラフト会議があり、球団が誰を一位指名するかが、ガスの意見にかかっている。ガスたちスカウトは、めぼしい選手がいる高校チームの試合を見て回らないといけない。
スカウト部長(ジョン・グッドマン)はガスの長年の親友だが、ガスの様子がおかしいので、ガスの娘のミッキーに様子を見てやってくれと連絡した。同じ球団のスカウトチームには、選手を見ずに、最近流行りのデータ分析で選手の良し悪しを決めるライバルがいて、ガスやスカウト部長を蹴落とそうと狙ってる。
ミッキー(エイミー・アダムス。かわいい)は法律事務所で弁護士として猛烈に働いていて、今担当中の裁判に勝ったら役員に昇格する、と上司から言われるところまで来た。前途有望だけど、楽じゃない。恋人もいて、結婚もほのめかされてたりする。
ミッキーが心配してガスの様子を見に行くと、ガスは「何しにきた、何も問題なんかない」と追い返すのだけど、明らかに様子がおかしいので、ミッキーはガスと一緒に高校生チームの試合を見て回る。ミッキーは子供の頃からガスに連れられて野球場を回っていて、野球には詳しい。何年のワールドシリーズの第何戦で誰それにホームランを打たれた4人の投手は誰、ってなクイズにすらすら答えられるくらい。
ガスはドラフトでちゃんと指名ができるのか、ライバルスカウトとの競争はどうなるのか、ミッキーの昇進と恋人はどうなるのか。ガスとミッキーはどうしてまともに話ができないのか。二人の間のわだかまりは解けるのか。まぁ、そういった興味で引っ張るストーリーなわけです。
2011年のブラピの映画「マネーボール」の裏返し。「マネーボール」では、スカウト部長のブラピがコンピュータオタクと組んで、成績が悪くて他の球団から安値でトレードに出されてる選手の中から、統計的に見ると実は勝ちに貢献している選手を見つけて、金のない弱小球団を勝てるチームに変えてました。その間、ブラピたちはマスコミや野球評論家や他のスカウトから、
コンピュータに何が分かる。人間のスカウトが球場に出かけて直に選手を見てこそ、選手の良し悪しが分かるんだ。
と言われ続けたのだけど。
一方、この Trouble with the curve では、データ派のスカウトが悪役で、ガスが、
人間のスカウトが球場に出かけて直に選手を見てこそ、選手の良し悪しが分かるんだ(たとえ目が弱っていても……)
と言い張ります。
「マネーボール」はコロンビア・ピクチャーズで、こっちはワーナーブラザーズでした。
球団のボス、ヴィンス、がロバート・T1000・パトリックでした。この人どこに出てきてもT1000に見える。コンピュータ対ジジイのスカウト合戦で、最後の審判を下す役。「お前はくびだ!」よく似合ってました。
ライバル球団のスカウト、ジョニーはジャスティン・ティンバーレイク。この人この映画では真人間の好感度高い役ですが、 Bad Teacher の奇天烈な役の印象が強すぎてなじめん。今 imdb で見たら、ソーシャル・ネットワークでもショーン・パーカーの役で出てたんだ。 Drop the “The.” Just “Facebook.” の人かぁ。やっぱりエグイ人の役ですね。
ボー・ジェントリーは今年の高校球界の一番の注目選手。この憎憎しげな坊やと対決する、あっと驚くダークホースの顔が、野茂っぽいと思ったのは、例によって私の目の節穴ぶりかなぁ。
以下、ネタバレ。
伏線がよく貼ってあって、後で次々回収されます。冒頭の馬が走るシーン。ナッツの袋をボーが買わずにつけにするシーン。酒場でミッキーに絡んだ男にガスが激昂するシーン。どれも最初に出てきたときは伏線だと気がつきませんでした。
でも、結末は、とても御都合主義。ミッキーは仕事をライバルの弁護士に取られて昇進もダメになるのだけど、結局そのライバルは大事なプレゼンに失敗し、ミッキーにまた昇進のチャンスが戻ってくる。その上、ガスとミッキーに騙されたと信じて去っていったジョニーまでミッキーの所に戻ってくる。どっちもなぜそうなったのかほとんど説明されてないと思うんだけど…