鎌倉の白い壁
近所の神社に行ったら、「夏詣」と書かれたのぼりが立っていて、参道の途中に茅の輪が作ってあった。
茅の輪は「かやのわ」ではなく「ちのわ」と読むらしい。茅はかやと読むのだから、かやのわでもよさそうなものだが、元はチガヤで作った輪なのでちのわなのだという。チガヤと言われると、今度はチガヤがどの草なのか分からない。たぶん見れば、ああこれか、となる草である。
輪の横にくぐり方が書いてあったので、左、右、左と八の字を描いて律儀にくぐった。
こういうものは、別にやらなくても誰にも叱られない。しかし、くぐり方まで読んだあとで素通りすると、それはそれで少し気になる。神様に悪いというより、手順だけ確認して実行しなかったことが気になるのである。
鶴岡八幡宮でも、行くたびに茅の輪を見かけるような気がする。
もちろん、一年中置かれているはずはない。私がたまたま夏に行くことが多いのか、輪がある時だけ記憶に残るのか、その両方だろう。何も置かれていない参道は何度歩いても記憶に残らないが、巨大な草の輪が置かれていれば、さすがに残る。
鶴岡八幡宮へ行く途中には、鳩サブレーの豊島屋本店がある。
白い大きな壁の建物で、鎌倉へ行くたびに前を通る。店というより、鎌倉駅から八幡宮へ向かう道の途中にある白い地形である。何十回も見ているはずなのに、白くて大きいこと以外ほとんど覚えていない。
あの壁には窓がいくつあるのだろう。
今まで一度も数えようと思ったことはなかったが、いったん気になると、次に通るまで確かめようがない。写真を検索すればすぐ分かるかもしれないが、そこまでして知りたいわけでもない。
豊島屋は鎌倉の海水浴場のネーミングライツを買って、名前を変えなかったことで知られている。海岸の名前は守ったが、本店の窓がいくつあるかは、たぶんほとんど誰も気にしていない。
次に鎌倉へ行ったら数えようと思う。
たぶん茅の輪があるかどうかを見ているうちに忘れる。