エヴァの告白
生きようとすることが罪かって?そうだよ、だけどそんなことはどうでもいいんだよ、惚れちまったんだから。
エヴァの告白 (原題: The Immigrant)
この映画、日本では「ただ生きようとした、それが罪ですか」というコピーで宣伝していた。それは、つまり、エヴァが生きていくために、身を売ったり、盗みを働いたりするのを、あの状況では仕方がないよね、身寄りのない女がひとり生きていくのは大変だよね、という意味だ。それは、「生きていくのは大変だ」という想いを抱えた観客に共感を呼ぶことを狙っているんだと思う。生きるために犯す罪は、責められるべきものではない、という許しを得たい人はけっこういるに違いない。
それはそれで、この映画の分かりやすい解釈の一つだと思う。男女どちらの観客にも共感する人はいると思う。
でも、男は、ブルーノに共感することもできる。ブルーノはエヴァに惚れてしまった。もうそうなってしまったら、他のことはどうでもいい。エヴァの振る舞いが罪だろうが罪でなかろうが関係ない。ひたすらエヴァを助けたいだけ。
ただ一つ、エミールにエヴァを取られるのだけはがまんできない。昔のいきさつも色々あるらしいけど、もっと本能的に、惚れた女を他の男に取られるのは嫌で、だからエミールのことになるとブルーノは逆上する。芝居小屋から追い出される羽目になろうが関係ない。
ブルーノの頭の中にも、エヴァにのぼせ上がった部分の他に冷静な部分はきっとある。冷静な部分から見ると、エヴァは顔がきれいでブルーノの商売に役立ちそうな、倫理観のちょっとルーズな女に過ぎない。エヴァは飛びぬけて美しいために、そうでない他の女たちには得られない特別扱いをブルーノからもエミールからも受けている。それは他の女たちから見れば、ずるいだろう。
エヴァが自ら進んで動いたのは、ごくわずか。それも他人の好意にすがりにいっただけ。もちろん、他にエヴァに何ができたわけでもない。けれど、「それが罪ですか」と開き直っていいことではないと思う。
けれど、好きになってしまったらそんなことは関係ない。そんなこと考えもしなくなる。エヴァに幸せになってもらいたいだけ。思うのは、そのために自分に何ができるかだけ。
以下、ネタバレを含みます。
ブルーノは結局、最後にはぼろぼろになって、エヴァを助けるための金も工面できなくなる。エヴァがその金を自分でなんとか用意したとき、ブルーノにできたのは、エヴァの妹をエリス島の検疫施設から引き取るコネを紹介することだけ。そのコネと話をつけるための金はエヴァが自分で用意したもの。そしてもう一つ、ブルーノはエヴァを手元においておくのをあきらめて、エヴァを西海岸に送り出した。ブルーノ自身の未来はもう破綻している。殺人犯として捕まるのも間近……
惚れた女を助けるために、滅んでいく男、って構図がぐっとくるんですよ。健さん映画に通じるものがある。
え、エミールには共感しないのかって?共感する男はいるでしょうね。
ただし、イケメンに限る。
あとは、思いつくまま。
うちの奥さんが、見終わってから、「なんでこんなしみったれた映画見せたの」とご立腹。陰鬱な、けだるい気分が続いて、派手なシーンや陽気なシーンがないのがお気にめさなかったらしい。最初から最後まで、画面の色調がセピア色。フィルターかけてあるのかというと、そうでもなさそう。当時の照明の色によるんじゃないかな。
いや、だって、ほら、「映画上級者」を自称する君にぴったりだと思ったから。imdbのスコアも6.6で、さほど高くない。批評家の評価とか、Rotten Tomatoesの評価は高いのだけど。僕がなんで気に入ったかって?飛行機の中でみて、エヴァに惚れたブルーノに感情移入しちゃったから。
マリオン・コティヤール、きれいだとは思っていましたが、この映画で初めて、魅力的だと思いました。今まで見たのが、インセプションとダークナイト・ライジングでの脇役だけだったからかも。うちの奥さんが、「この人いくつ?まだ若いよねぇ」というのでググッたら、1975年生まれ。僕はそんなもんだろうと思ってたけど、うちの奥さんは驚いてた。最近のアラフォーはうかっとすると20台に見える瞬間がある。